IT業界の職場の過酷さは随分前から言及され、世間でもよく知られている。毎日当たり前のように残業が続き、泊まり込みすらも珍しいことではない。終わりの見えない作業に鬱病になる者が現れ、仕事中に姿を消す者もいるなどという話が次々と出てくる。それがあまりにも多いものだから小説や映画のネタになっているほどだ。

こうした認識が浸透するにつれてIT業界を目指すものは激減し、その結果として今業界内のエンジニアは大変な人手不足に陥っている。そして、その次に何が起きているかというと人材流出である。IT業界に入ってくる新戦力の増大が見込めないので、今度はその少ないパイを業界内で取り合おうというわけだ。給与や職場環境の悪い企業に勤めている優秀な人材は、ヘッドハンティングによって別の企業に引き抜かれることになる。また、ヘッドハンターが動かなくても企業に不満を持っている社員は転職エージェントに登録し、それを見た各企業のスカウトが群がることのなるのだ。そして、職場環境に劣る企業は、さらに人手不足になり、その職場環境はより一層悪くなるという終わりなき悪循環に見舞われる。

しかしそもそも、なぜデスマーチと呼ばれるまでの劣悪な環境が出来てしまったのかといえば、人海戦術に頼ってエンジニアの教育を怠ってきたからだ。教育をしっかりとし、全体のレベルを上げてやれば仕事の効率化が図れ、異常なまでの忙しさも緩和されるはずなのである。